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トカエフの再選で何が変わり、何が変わらないのか 専門家の見解

11月20日、カザフスタンで大統領の臨時選挙が行われ、現職のトカエフ大統領が82.45%の票を獲得し再選を確実にしました。今回の選挙の投票率は69.43%でした。

トカエフは「公正なカザフスタンを築くための根本的かつ包括的な改革の実施」を公約に掲げていますが、トカエフの新任期中に何が行われるのかまだ明らかではありません。これについて、現地のメディア記者がカーネギー国際平和基金の研究員ウマロフ氏にインタビューを行いました。以下はインタビュー内容の翻訳です。

-今日のロシアにとって中央アジア地域における主要国はカザフスタンです。今回のカザフスタンでの選挙をどのように評価しますか?
-今回の選挙は、ポストソビエト時代の権威主義国家における典型的なものだ。競争や策略などが働いていない。トカエフの他に6人が立候補していたが、いずれも政府寄りの人間だった。カザフスタンでは憲法が改正されたが、相変わらず無党派の候補者は立候補できないし、自薦も認められていない。どんな候補者であっても何らかの政党から出馬する必要があり、支持基盤が社会にある人にとっては大きな障害となる。つまるところ、今回の選挙はトカエフの任期が7年延びるということである。憲法改正により大統領の再選が認められなくなったので、これがトカエフの最後の任期となるが、この間は何が起こるか予想がつかない。

-今年のカザフスタンはガス価格の上昇による暴動から始まりました。CSTOによるロシアの平和維持軍の派遣によって事態を鎮静化させましたが、ロシアとカザフスタンの関係は静かに終わりを迎えているように見えます。カザフスタンは当初からロシアのウクライナ侵攻に距離を置き、またトカエフ自身も、軍事侵攻やウクライナでのロシアによる国民投票を指示しない旨の発言をしていました。そしてロシアで召集対象となった人の受け入れも行っています。ロシアとカザフスタンはこのまま袂を分かつのでしょうか?あるいは何か別の方向があるのでしょうか?
-ウクライナ侵攻以前、ロシアとカザフスタンの国内情勢は似たようなものだった。当局に対し民衆の不満が噴出していたのだ。しかしこれへの対応は大きく異なっていた。カザフスタンでは経済だけでなく政治分野でも改革を進め、憲法も多かれ少なかれ進歩的な内容に改正され、ロシアのように憲法で家族の価値観に言及するようなおかしなこともしなかった。カザフスタンは「超大統領制」の国ではあるが、大統領の影響力低下は認められた。
ロシアは反対の道を進んでいる。保守主義を強化し、より検閲や弾圧を厳しくした。これにより両者の政治体制は分かれ始めている。カザフスタンが西側に対して開放的になるということは、ロシアにとって受け入れがたい事実となるだろう。多くの西側諸国のNGOが活動し、活動家に助成金を渡すなどの支援を行う。ロシアはこれを否定的に見ており、「第五列」すなわちスパイや不利益をもたらすものと考えている。この両者の溝はますます深まることだろう。

-ウクライナ侵攻に関連して、カザフスタン北部(ロシアの一部の発言によれば「南シベリア」)が歴史的ロシアであるという考えが増えています。ウクライナの例のようにこれは幻想でしょうか?それとも侮れない考えでしょうか?
-これについては、侵攻前後で考えが変わった。2月24日までに聞かれていたら、幻想にすぎないと答えていただろう。だが今は全てが可能になった。どのような言説も単なるレトリックの範疇を超える可能性があり、これはここ1年弱を見ての通りである。しかしながら、カザフスタンとウクライナは異なるということもまた事実である。まず第一に、カザフスタンでは急進的な民族主義的レトリックを用いることが少ない。カザフ民族のアイデンティティの強化やカザフ語の普及などの政策も行ってはいるが、ロシア語やロシア人を圧迫するほどではなく、またカザフスタンはロシアが主導するCISやCSTOなどの枠組みにも加盟している。
更に、カザフスタンはウクライナと違いロシアとの間でエリート同士の交流も盛んである。こういったことから、カザフスタンが侵攻を受けるという可能性は挽くと考えられる。しかしながら、ウクライナは存在しないというロシアの公式見解は旧ソ連国の緊張を高め、特にメドベージェフの発言はカザフスタンでも物議を醸すものとなっている。

-トカエフは本当に過去の政治体制と決別する気があるのでしょうか?それとも単なる政治的ショーでしょうか?
-トカエフが全権を掌握したのは2022年春ごろからだ。現在のカザフスタンでは国民の政治参加はまだ少ないが、近代的な能力主義的独裁国家となりつつある。大衆の声を聞き、行動を改善していくものである。首都の名前がヌルスルタンからアスタナに戻ったのはその好例である。政治改革というより、国民からの人気取りの側面が大きい。ナザルバエフのによって政治そのものの印象が悪化していた。若者たちが「老人よ去れ!」と抗議していたことは記憶に新しい。トカエフはこれらから解放される必要があった。
次の7年を統治を安定的なものにするには、大衆の要求に応え、権力の掌握以外にも支持を得るための柔軟な対応が必要となる。彼を個人的に脅かさないことに限り、譲歩が行われるだろう。
その他の問題についての変更はほとんど期待できない。例えば権力移譲の問題だ。カザフスタンでは大統領職を去る人の身の安全を保障する法律がまだない。7年で大統領をやめてたとしても安心した年金生活が待っているわけではない。そのため、権力は安心できる人へ移譲するか最後まで譲らないかのどちらかになるだろう。

-CSTOの話が出ましたが、中央アジアにおけるCSTOの今後の役割はどうなるでしょうか?
-CSTOの主な役割は、ロシアにとって友好的な政体の維持である。カラバフ紛争やタジク・キルギス紛争などの複雑な問題には役に立たない存在である。CSTOはあくまで政権を安定的に維持させるための組織だ。今後もその目標は変わらないだろう。

-カザフスタンにおける西側諸国の影響はどの程度あるでしょうか?
-アメリカの関心は限定的だ。特にアメリカは既にアフガニスタンを去っている。この地域においてアメリカは民主化や教育の重要性を説いているが、それは他の地域でも同様の話だ。
ロシアは、西側企業が何らかの形でカザフスタンの外交政策に影響を与え、ロシアから遠ざけるのではないかと恐れている。しかしこれは根拠のない言説だ。西側諸国が遠ざけているというより、むしろロシア自身が協力を困難にしている。今日、ロシアとの協力は国際社会での孤立化への片道切符である。カザフスタンは当然これを望んでいない。

-カザフスタンに対するロシアへの影響を保持するものの1つとして、ガスのパイプラインがあります。カザフスタンは最近ロシアを迂回するルートの構築に力を入れ始めました。これは現実的に可能でしょうか?
-エネルギー分野においてすぐに出来ることはない。新ルートはコストがかかる上に輸送量も少なくなる。またルート変更には採掘所の操業も止めなくてはいけなくなるため、多大なコストがかかる。

-トカエフは軍隊と政治体制の近代化を公約としていました。これによってカザフスタンの国民の生活が損なわれることはありますか?
-2月の開戦以降、旧ソ連国の多くの指導者が軍隊を強化している。カザフスタンだけでなく多くの国で軍隊に一番投資している。カザフスタンは特にロシアと長く国境を接しているため、必要に駆られている。
軍隊の近代化への資金は十分かということだが、備えは十分だ。カザフスタンは中央アジアで最も裕福な国であり、1人当たりのGDPもロシアとほぼ変わらない。世界でエネルギー価格が高騰してる中、カザフスタンの所得は上がっている。軍隊の強化が生活に与える影響は限定的であると思われる。

-ロシアとカザフスタンが軍事的に衝突する可能性はあるのでしょうか?
-ロシアが「ロシア恐怖症」の言説を探し続け、それを攻撃し続ける限りその可能性は排除できない。しかしながら、これはロシアが持つ資源に大きく依存する話である。現在でも、ロシアはウクライナでの戦争を続けるだけの十分な資源を持っていない。この状態で新しい軍事行動に出ることはできないだろう。また、プーチンはウクライナに対して言っていたような「カザフスタンは存在しない」のような発言もしていない。今のところは友好的な関係にあるので、軍事的な衝突について話すのはまだ時期尚早だろう。

-世界は今後米中二極化が進むと予想されています。習近平はトカエフに対し「信頼できるパートナー」と語っていますが、これは単なる社交辞令でしょうか?それとも長期的な外交施策でしょうか?
-ロシアと中国の関係はお互いに優先事項だ。しかしながら中国はウクライナの領土の保全を尊重すると述べている。とはいえ実際には何もサポートしていない。それゆえ習近平のことばは文字通り受け取るべきではない。

-カザフスタンは5月にトルコと軍事的な協力をする協定を結びました。この合意はどこまで進展するでしょうか?
-トルコは近年中央アジアでの活動を活発化させているが、影響はまだ限定的だ。トルコがロシアや中国と異なるのは、中央アジアとの協力が国家の安全保障にあまり関係がないということである。トルコは単に、中央アジアでの自身の影響力を利用しようとしているだけである。トルコは、影響力という点ではロシアと中国にはるかに及ばない。

-中央アジアへの脅威としてはアフガニスタンのタリバン政権が思い当たります。ロシアはアフガニスタンへエネルギーや穀物の供給を開始していますが、これはどのような結果をもたらすでしょうか?
-ロシアの懸念は、中央アジア地域との国境の安定である。これについてロシアはタリバン政権に連絡を取っており、今のところその目標は達成され、国境は安定している。タリバン政権が凶暴なオオカミであるということはない。少なくともタリバン政権の代表は国家と国境の安全を掲げ、他国への攻撃などは計画していない。現在の中央アジア諸国にとって、タリバン政権はプーチン政権よりも予測しやすい。

-ウクライナ侵攻の結果によって、ロシアの未来は大きく変わることでしょう。西洋と中国のものとなる世界か、あるいはその2地域がロシアの利益を考慮に入れなくてはいけない世界か。ロシアが敗北した場合、中央アジア諸国のロシアに対する態度はどのようなものになるでしょうか?
-「ウクライナは現実に存在する国家ではなく、したがって存在するべきではない」という口実でロシアがウクライナに侵攻したことにより、旧ソ連国はロシアから遠ざかっている。プーチンが望むことは、モスクワの支配下にあるソ連の復活だ。それによってロシアは自らの手で中央アジアの魅力を破壊している。また、ロシアが経済的に孤立することは、ロシアに代わる中央アジアの新しいパートナーを探すことを強いている。しかしながら、中央アジアでロシアの影響を完全に無くすには5年では到底不可能であろう。ロシア帝国からソ連まで続いたロシアの支配によって、中央アジアでのロシアの影響は極めて深いものとなった。中央アジア諸国がロシアと「離婚」するには数十年はかかるだろう。

情報源:
https://centralasia.media/news:1821294/

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